スパイと皇女
ジル「なんのさわぎですか、あれは」
従者「なんでも、都市同盟のスパイがつかまったとかで、これから処刑場へひきたてられるようです」
ジル「そう」
ジル「まだ・・・・子供じゃない・・・なにゆえにスパイなど・・・・」
主人公「・・・・・・」
ジョウイ「・・・・・・あなたにそれを問う権利があるのですか」
従者「貴様、この方はブライト王家のジル皇女様・・・・・」
ジル「やめなさい」
ジョウイ「皇女?では、おぼえておいてください・・・ぼくと主人公は、この国をうらぎってなどいません。
この国がぼくらをうらぎったんです。そのことをぼくは許しません。決して・・・・・」
従者「なんてことを!貴様、誰に向かっていっていると・・・・・」
ジル「いいのよ。いかせてあげなさい。どうせ、あとしばらくの命なのでしょう・・」
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ハイランド式もてなし
ジル「何者ですか、あなたたちは?ここは王族のためのテントですよ」
ジョウイ「しかたない・・・・・」
ラウド「皇女ジルさま、わたくしは警備をおおせつかっているラウドと申します
このキャンプに都市同盟のスパイが二名ほど忍び込みまして、もうしわけありませんが、中を調べさせてもらいたいのですが・・・」
ジル「その必要はありません。さがりなさい」
ラウド「お時間はとらせませんので・・・・」
ジル「おねがいします。ひとりになりたいのですか」
ラウド「し、しかし万が一ということが・・・・」
ジル「さがりなさいと言っています。レディの寝所をあらそうと言うのですか?」
ラウド「あ・・・・い、いえ、そういうわけでは・・・・そ、それでは失礼させてもらいます
おさわがせしてもうしわけありません」
ジル「これでよいのかしら。スパイさん?」
ジョウイ「おどしたりして・・・・ごめんなさい」
ジル「いえ・・・・・・」
ジョウイ「何を・・・・・・・」
ジル「そんなにおびえないでちょうだい。お茶をいれようかと思って。しばらくはここから出られないのでしょう。
ハイランド式のもてなしよ
それから、その手にもっているナイフ。しまっていただけますか?それとも、都市同盟ではそれがもてなしなの?」
ジョウイ「・・・・・・・・・・・」
ジル「あなたたちとはキャロの街で一度会っているわね。あの時、あなたは 『この国がぼくらを裏切ったんです。そのことをぼくは許さない』と言っていたわね・・・・・どう?実現できそうかしら?」
ジョウイ「それは・・・・・・・・」
主人公「かならず、いつか、必ず・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」
ジル「あら、あの時の元気はどうしたのかしら?」
ジョウイ「ジルさん・・・・・いえ、皇女さま。あなたは、なぜこんな所にいるのですか?」
ジル「わが兄・・・・・・ルカ・ブライトはご存知でしょう?」
主人公「知っています」 「・・・・・・恐ろしい、けだものです」
ジル「いえ・・・・いいのです、その通りですから・・・・・
兄は、この戦いを広げようとしています。ハイランド国民の多くは、戦乱に疲れ果てているのに・・・・・
それに・・・・・兄はもっと恐ろしいことを考えています・・・・・それを止められればと思い・・・ここまで来たのですが
・・・ムダだったようです・・・・話を聞いてくれるどころか・・・・兄にとっては、私までもが敵のようです・・・」
ジル「わたくしには兄を止める力はないようです。それを思い知らされただけ・・・・・・女の身では、ここまでなのでしょうか・・・・」
ジル「長話が過ぎたみたいね。お茶もさめてしまいました・・・・・・そろそろ外も静まったようです。お帰りになってはいかが?」
主人公「そうですね」 「お茶、おいしかったです」
ジル「さようなら。もう会うことはないでしょう・・・・・・」
ジョウイ「・・・・・・・ごめんなさい」
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皇王暗殺
アガレス「ジル・・・・本当によいのだな」
ジル「はい・・・・彼をわが夫といたします」
アガレス「うむ・・・・ならば認めよう」
神官「ジル様・・・・こちらへ・・・・騎士の誓いは王と騎士と見届け人で行われますゆえ」
ジル「はい・・・・・・」
ルカ「ふ・・・・・・」
アガレス「それではこれよりハイランドの忠実なる臣下ジョウイ・アトレイドを騎士として認める」
ジョウイ「わたしジョウイ・アトレイドは騎士としてハイランド皇王アガレス・ブライトに忠誠を誓うことを我が血をもって、示します」
ルカ「見届け人として、忠誠のワインを確かめる」
ルカ「いい味だ・・・・」
血をたらすジョウイ。
ジョウイ「我が血を、忠誠の証とせん」
アガレス「騎士ジョウイ・アトレイド、おまえの血を我が身体の一部とする」
アガレス「これで、おまえはわがハイランド王国とブライト王家に忠実なる騎士と・・・・として・・・・」
血を吐いて倒れるアガレス。
アガレス「う・・・・こ・・・これは・・・・」
ルカ「ふはははははははは!」
アガレス「お、おのれ、これは毒・・・や、やはり・・・貴様は・・・しかし・・・・どうやって・・・・」
ルカ「ふん、貴様は疑り深いので苦労したぞ。毒見をした食事以外は、水一杯でも決して口にはしない。 しかしこれで、やっと邪魔者が一人消えるというわけだ」
アガレス「き・・・・きさまは・・・・・父を。・・・・・その手に・・・・・かけるか・・・・・」
ルカ「ふん。バカを言うな!!貴様が父などと!!貴様は、妻一人も守れず!!薄汚い罪人どもの国と和平を結ぼうとした裏切り者だ!!」
アガレス「な・・・・なにを・・・・いう・・・・」
ルカ「我が母が恥辱を受けたとき、貴様は何をしたのだ!!命おしさに逃げたのは誰だ!! 母とこのおれが近衛隊の手で助け出されたときに、玉座で震えていたのは誰だ!!!」
ルカ「・・・・まぁよい。きさまはすでに罰を受けた。死という名の罰をな。後は、薄汚い罪人どもをすべて消し去るだけだ。 汚れを浄化するためにな・・・・」
アガレス「や・・・・やめろ・・・・サ・・・サラは・・・・」
ルカ「貴様が・・・・口にしてよいなではない」
ルカ「よくやったジョウイ・アトレイド。おまえはアガレスに忠誠を誓った最後の騎士で誓いを破った最初の騎士だ。ふはははははははは」
倒れるジョウイ。
ジョウイ「うう・・・・・・」
ルカ「しかし、よくそんなことを思いつく。解毒剤を、飲んでいるとはいえ、みずからの血に毒を流し込むとはな」
ジルが来る。
ジル「お父様、目を開けてくださいお父様!!」
ルカ「ムダだ・・・・すでに息絶えているはずさ」
ジル「に、にいさま!!まさか、にいさまが!!」
ルカ「なぜなく、ジル?その男は、貴様の父などではないのだぞ!!ふはははは」
ジル「う、ううっ・・・」
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結婚式
ルルノイエ。紫マントのジョウイと白マントのジル。
神官「すべるものたる円の紋章と守護者たる力、獣の紋章の名において、ブライト王家に新たなる輝きのあらんことを
ジョウイ・ブライト、ジル・ブライト、そなたたちの誓いを、ここに記すがよい」
ジョウイ「わが身と我が心をもって、ここに守護者として、騎士として、臣民として、ジル・ブライトに仕えることを誓います」
ジル「・・・・・」
神官「いかがなされました」
ジル「・・・・わが身と我が心をもって、ここに王家の血統として、ジョウイ・ブライトを・・・・・我が夫とし、彼の者に、
皇王の座を授けジョウイ・ブライトにつかえることを誓います」
神官「そなたたちの道行きに栄光あらんことを」
剣の道。あるくジョウイ。追いかけるジル。
ジョウイ「僕の・・・・道行に・・・・栄光を・・・・か」
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獣の紋章・生贄の儀式
「聞けハイランドの戦士たちよ、われらは騎士団領を失ったが、いまだ敗北したわけではない」
オー
「われらの軍勢はいまだ朱雀軍に劣ってはいない、勝負の行方はさだまっておらぬ」
オー
「ハルモニア神聖国よりたまわりし紋章。ブライト王家に伝わる伝説の紋章。27の真の紋章の一つ。
破壊と守護を司る獣の紋章のまえにて、誓いをたてよ。ハイランドの王よ」
「ハイランド王国、ブライト王家の名にかけて勝利の願いをこめ・・・・我がもっとも近しきものを・・・
最愛なるものを・・・・・獣の紋章よ、我妻、ジル・ブライトの血をそなたにささげる!」
剣でつきさすジョウイ。
「勝利こそが、われらの進む道。勝利こそが。われらの願い」
「今こそ、戦いの時、やぶれしときはハイランドが失われるときと思え」
オー
「人形の後始末を頼みます」
「できはいかがでしたかな」
「よくできていた。出来過ぎだ・・・・・・」
座り込むジョウイ。
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最後の抱擁
「お呼びですか」
「入ってくれ」
「君に頼みがある、ジル」
「なんでしょうか」
「シードとクルガンが時間をかせいでくれているが、この城はまもなく落ちる。そして、ハイランドも消え去るだろう。
その前に、この子を、ピリカを連れて逃げてくれ。ハルモニアの片隅に家を用意してある。
召使たちにもよくいいふくめてある。君はそこで・・・・ブライト王家の人間ではなく・・・・新しい名で生きるんだ・・・・・」
「・・・・・・分かりました・・・・・それで、終わり、ですか・・・・?」
「そうだ・・・・」
「では、失礼します。いらっしゃい・・・・ピリカ・・・・」
「すまない・・・・ジル」
「なぜ、わびるのですか?どうして、そのまま!!」
「ジル・・・・?」
「あなたが、私を利用していたこと、あなたが父と兄に何をしたのか、あなたが何を手にいれようとしているのか、すべてを、私は知っていました。
それでも、それでもあなたの心を、あなたの想いを、あなたの目指すものを知っていたから、すべてに目を伏せて、
私はあなたを愛したのに、なぜ、あなたは私にわびるのですか?
あなたは、あなたの想うことを行い、それをわびる必要はありません。それが、私の夫・・・・私の愛した人なのだから」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・もし、私が死んだらあなたは涙を流してくれますか?」
「・・・・・・・・・生きてくれ。・・・・ジル」
駆け寄るジル。
「これが・・・・最後の・・・・・」
「ジル・・・・」
「さよなら・・・・ジョウイ・・・・」
「さよなら・・・・ジル」
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